No.2 アメノクニ フルコトフミ innerchild 時事通信ホール

★★★★☆
説明するとかなり長くなるのでチラシに書かれた「御挨拶」を引用する。

日本人の大半が「無神論者」と誰もが思っているかもしれないが、それは全く逆だと思う。
僕らには古くからの確固たる信心があるし、信心という意味ではこれ程に
何もかも信じられる民族はきっと稀だろう。
じゃあ何故に僕らは無神論を叫びつつ信心を持てるのか?
それはきっと僕らの信仰が「カミ」に基くからだろう。
日本の「カミ」は万物に宿る上位の精霊のような存在で本来は人の形をなさない。
今の僕らが頑なに否定したがるソレは「神」であって「カミ」ではないのだ。
古代、日本との交流が深かった中国が「カミ」の概念に「神」の漢字を当ててから、
日本はカミは人格神の性質を帯び始めた。
それが近代、日本を世界に引きずり出した欧米が「GOD」と翻訳してからは、
唯一絶対神として意識され始めた。
この本義と解釈のズレを僕らは長らく引きずっている。
町往く人に「神様を信じますか?」と問えば誰もが変な顔をするだろう。
でも、「霊やあの世を、生まれ変わりを信じますか?」と問えばどうか?
例のスピリチュアルな深夜番組など見てると、僕は話の有難さ以上に
”ああ、やっぱりな”と思ってしまう。
僕らはどうしても何かを信じたい。
それを信じて安心したい。
安心とは保証のことで、保証人を「神」に託すことに抵抗する僕らは
その代りに前世だの守護霊だのにその代わりを求め、
霊感ある有難い御方の本を愛読して人生の指針なんかにしている。
勿論、日本人の精神文化を幾らか孕んでいようが、そのベクトルは日本神話に向かない。
戦後アレルギーの治らないこの国で、やはり「古事記」「日本書紀」はどうしても取っ付き難い。
まぁ正直・・・読めば読む程人生の指針になどならないし、
そもそも何かを教えるつもりすらないことが分かる。
古事記」は確かに神話だけど、そこに描かれているのは生々しい人間の生である。
しかし神を求める力はそんな物語ですら、信じる力に転化してあんな戦争を利用した。
それはそれですごい力なんだと思う。
そんな物語を作った張本人はどんな人生を歩み、
何を信じたのだろうという興味から今回の企画は始まりました。
神話と歴史をないまぜにして物語る今回のお話は、
ひょっとすると「古事記」の本質に近いのでは、とも思いましたが、
すみません判断は皆様に委ねます。
以下略
innnerchild主宰 小手伸也

芝居を観た後でこの「御挨拶」を読むと、何となく分かったような気になれる。
ストレートに芝居だけを観て色々と分かった人は、相当理解力がある人だと思う。
以下ネタバレ
上映時間は約2時間半弱。昼公演(12時開演)にも関わらず、殆ど最後まで寝ないで観れた。でも、最後の数分。「古事記」を書く役の太安万侶(おおやすまーる)「やすまーる」の台詞を聞けなかったのは残念。
次回公演は「アメノクニ/ヤマトブミ」だそうだ。続きかな?吉祥寺シアターだから、今回の時事通信ホールよりいいでしょう。芝居をする劇場じゃないよ。奥行きが無さ過ぎ。
全体的には物語り主導で、役者の演技云々は、あまり影響が無いと思われる。映像の使い方が上手いので、情報量が多い割には置いていかれないで済んだ。相変わらず、女性の好みは私と似ている(芝居には全く関係ないけど)。
元明帝御代(ゲンメイテイミシロ)「ミシロ」役の板垣桃子さんをどこかで観たと引っ掛かっていたので、調べてみた。桟敷童子の「海猫街」で観てました。個人的に橘三千代(たちばなみちよ)「ミチヨ」役の関本なこさんが好みです。
この芝居ってどういう評価をすればいいんでしょう。私は古事記誕生の色々とか好きだから興味深く着いて行ったけど、その辺に全く興味の無い人は、着いて行けなかっただろう、と思う。