完読No.125 おまけのこ 畠中 恵 著 新潮文庫

裏表紙

一人が寂しくて泣きますか?あの人に、あなたの素顔を見せられますか?心優しき若だんなと妖たちが思案を巡らす、ちょっと訳ありの難事件。「しゃばけ」シリーズ第4弾は、ますます味わい深く登場です。鼻つまみ者の哀しみが胸に迫る「こわい」、滑稽なまでの厚化粧をやめられない微妙な娘心を描く「畳紙」、鳴家の冒険が愛らしい表題作など全5編。じっくりしみじみ、お楽しみ下さい!

以下ネタばれ
・こわい:哀しいお話です。誰からも忌み嫌われ、仏からも嫌われる妖「狐者異(こわい)」。若旦那の優しさにも応えられないほどの、今までの人生(妖だから妖生か?)。どれだけ寂しかっただろう、どれだけ哀しかっただろう。そういう話。
・畳紙:人の心の奥底にある何か。それは他人には窺い知る事も出来ない闇。若しかしたら、自分自身も分からないのかもしれない。理不尽だと分かっていながら、許婚が自分に気付かぬ事に腹を立てる女心。男には分かりませんよ。屏風のぞきとお雛の話。
・動く影:この5編の中では一番好きな話。ヤング若旦那譚。若旦那5歳の頃の、たった一度の冒険。まだ、仁吉も佐助もいなかった時の話。栄吉と親友になるきっかけ。若旦那にもこんな、子供の頃のいい思い出があったんだね。それが嬉しい。
・ありんすこく:世の中、お金じゃない事もある。商売に差支えがあろうと、助けたいと思う親心。そんな親心を知りつつ、悪いとは思いながら、死にたくないと思う心。そう思ってはいけないと分かっていても、ついつい邪魔をしてしまった心。そんな、人の心の話。
・おまけのこ:鳴家の冒険譚。可愛いです。鳴家が若旦那の着物のそでの中で安心する姿がいいです。いつもは庇護されるばかりの若旦那も、この時だけは立派な大人に見えました。
解説:谷原章介(仁吉役)
いい解説です。意外?にいい文章書きますね。仁吉は君に任せた。依存もあるだろうけど。作品の本質をつかんでいる気がします。