完読No.76 アキハバラ@DEEP 石田 衣良 著 文春文庫


裏表紙

社会からドロップアウトした5人のおたく青年と、コスプレ喫茶のアイドル。彼らが裏秋葉原で出会ったとき、インターネットに革命を起こすeビジネスが生まれた。そしてネットの覇権を握ろうとする悪の帝王に、おたくの誇りをかけた戦いを挑む!TVドラマ、映画の原作としても話題の長篇青春電脳小説。

集中して石田衣良さんの本を読んでから暫く経っていたので、懐かしい感じもしつつ読み進めました。
以下ネタバレ
基本構造はIWGP4TEENと変わらない。キーワードは仲間と居場所。今回は登場人物が所謂”オタク”しかも、自分ではどうしようもない障害?を抱えている。それが時に弱さになり、そして時に強さにもなる。あるシーンでその弱さが強烈な強さに変わった時は、思わずニヤリとしてしまった。意思を持つAIと言う、ある程度使い古されたテーマをAIそのものより、それを作り出す、生まれてくるパワーを描くことにより新しさを感じさせる。仲間内の恋愛感情を廃しているので余計な感情が生まれず、一気に話が展開する。私はオタクでもないし、オタクっぽくも無いと思うけど(外見はそれっぽいけど)、彼らが抱えている問題は普遍的なものだから感情移入し易い。年齢的には一回り下の世代だが、それは選んだ状況のせいであって、石田衣良さんが描き出そうとしている事はほぼどの作品にも言える事だが、「優しさ」なのでギャップは感じない。この物語の6人もみな優しい。その優しさに包まれながら、主人公達は成長し、そして物語の傍観者である読者も少しだけ優しくなれる。様な気がする。