読書三昧

*p1*[book]完読No.40 刺青(タトゥー)白書 樋口 有介 著 創元推理文庫

裏表紙

女子大生・三浦鈴女(すずめ)は、中学時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受ける。彼女たちは二人とも、右肩に刺青痕があった。刺青(タトゥー)同様に二人が消したかった過去とは何か。第一の、アイドル殺害事件のレポートを依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めたー。鈴女の青春と、柚木のシニカルな優しさを描いた傑作、初文庫化で登場

以下ネタバレ
このシリーズでは初めて、柚木草平以外の人物が語り部を担当する。柚木草平も語り部にはあるが、それは補助的なもの。メインの語り部は三浦鈴女だ。
立て続けに中学時代の同級生が殺害された。一人はアイドル、猟奇的なやり方で殺害。もう一人はアナウンサーに内定が決まった女性、一見すると事故か自殺にも思える溺死。そして彼女達には共通項がある。中学時代、密かに憧れていた野球部のエース。彼と二人で謎を追う。中学時代から全く変わらないと言われる鈴女。他の者達は、この6年で様変わりしている。アイドル、アナウンサー、エースは野球を止め、結婚して母になった者もいる。先生も例外ではない。そんな中、鈴女は変わらない(本人は、他人からそう言われる度に「私だってバストが3cm大きくなったんだ」と呟く、それ程の変わらなさ。)。鈴女の変わらなさと、柚木の意外な程のかっこ良さ(そうじゃなければ、あんなに女性に手は出せない。)がいい感じで対比してます。結論は苦しいものですが、誰だって、6年も経てば変わる。変わらない事がどれほどの価値を持つのかは分からないが、私には鈴女の変わらなさに好感を持てた。初出版当時は編集者に評価されなかったそうだ。柚木の事務所の助手に鈴女を雇えばもっと面白くな
るのに。