完読No.47 神様がくれた指 佐藤 多佳子 著 新潮文庫


裏表紙

出所したその日に、利き腕に怪我を負ったスリ。ギャンブルに負けて、オケラになったタロット占い師。思いっ切りツイてない二人が都会の片隅でめぐりあった時、運命の歯車がゆっくり回り始めたことを、当人たちはまだ知らない。やがて登場するもう一人がすべてを変えてしまうことも。「偶然」という魔法の鎖で結ばれた若者たち。能天気にしてシリアスな、アドベンチャーゲームの行方は。

以下ネタバレ
『一瞬の風になれ』に本屋大賞を受賞した佐藤多佳子さん、初読み。
二人の主人公はじめ、登場人物が魅力的、気になる人物が多い。敵?である若いスリ・ハル、ハルの仲間で占いのお客永井リコ、スリの辻の幼馴染の咲、スリ一家の親分・西方etc。登場人物の造詣がこの話を支えている。
辻と占い師・昼間の共同生活は、男性の友人宅に転がり込んだことのある男性には身に覚えのある居心地の良さがある。女性から見たらライトBLっぽいのかな?辻に対する咲の思いはくすぐったいような、うらやましいようなものだ。永井の暗く、行き場のない切実感は、昼間にも読むものにも気になる存在として跡を残す。なかなか面白い作品でした。ハード・ボイルド、犯罪小説としては少々甘すぎるのが難点だが、人物関係は面白い。
ハルのイメージが、今連載中のガッシュベルの最大の敵に重なる。