完読No.70 約束 石田 衣良 著 角川文庫


裏表紙

親友を突然うしなった男の子、リストラに晒され、息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、不登校を続ける少年が出会った廃品回収車の老人、女手一つで仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病ー苦しみから立ちあがり、もういちど人生を歩きだす人々の姿を鮮やかに切り取った短篇集。たくさん泣いたあとは、あなたの心にも、明日を生きるちいさな勇気が戻ってくるはず。解説:北上次郎

・約束
・青いエグジット
・天国のベル
・冬のライダー
・夕日へ続く道
・ひとり桜
・ハートストーン
・あとがきを読んで「約束」は池田小学校の事件に対して書かれた作品だと知りました。そう考えると更に心に響く作品です。
・他人から見れば不幸な状況。自分自身もそう思っている。でも、それに耐えられるのはその事があったおかげ。息子に苦労させられているが、色々と耐えられるも息子のおかげ。この作品が一番こたえました。「青いエグジット」
・突然耳が聞こえなくなった息子。原因は?不倫の末に事故死した夫の残したラブレター。泣くなぁ〜。男の卑怯な言い訳かもしれないけど。許してあげて。「天国のベル」
・登場人物の心の傷を治すのではなく、登場人物がきっかけになって他の人の傷が治る。この作品だけ毛色が違う。年上の女性に憧れる少年の純情がいいです。「冬のライダー」
・物分りのいい親って言うのも時には子供にはきついもの。丸々従うのか全部拒絶するのか、人生それだけじゃない。人生経験豊富な老人と引き篭もりの少年。おにぎりが美味しそう。「夕日へ続く道」
・この作品は、夫を亡くした事に囚われて前へ進めない女性。ぽつんと1本咲く桜をきっかけに出会った男と女。大人の恋愛物語。「ひとり桜」
・若いのに命に係わる病気になってしまった少年。まだ、逝くな。順番が違う。祖父の思いは届くのか。届いて欲しい。「ハートストーン」
一つ一つの物語は取り立てて新しい材料を元に書かれてはいません。でも、石田さんにかかると非常に泣ける話に仕上がってしまう。石田マジック。北上さんは「天才的な詐欺師」と言ってますけどね。上手いです。