完読No.75 黒革の手帖 下 松本 清張 著 新潮文庫


裏表紙

元子を恨む波子は楢林と別れ、大物総会屋をパトロンにクラブを開く。政治家秘書の安島を通じ、医大裏口入学のリストを手中にした元子は、橋田をおどし、一流クラブ、ルダン買取りの仮契約を結ぶ。しかし、橋田、安島らの仕組んだ罠が元子を待ち受ける。安島との一夜での妊娠の不安に怯える元子の前には黒服の男たちが・・・・。夜の世界に生きる女の野望を描くサスペンス長編。

以下ネタバレ
上巻に漂うある種の爽快感が無くなり、元子の追い詰められた切迫感が漂う下巻。結局、元子の敵(仮にそう名付ける)の心情は全く描かないことで、元子の疎外感、驚愕度を深めることに成功した。倒叙物としても一級品。
ルダンの購入交渉の際の元子の値切りは良かった、結局、腹の中で笑われていただけだけどね。最後は哀れだったが、何故か元子を悪く思えない。