No.40 天国 ブラジル 中野ザ・ポケット

http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/
★★★★☆
ブラジルの公演は2度目。
ちらし ごあいさつ

今回は、ある自動車工場で働く期間工たちの話です。
期間工というのはある一定期間(だいたい6ヶ月)、会社の用意した寮に住み込みで働く期間労働者のことを指します。
給与のほか、残業代が支払われ、無料の住居が与えられ、各種保険も適用され、さらに契約期間を終えると、満了金まで支払われます。満了金は、会社によってまちまちですが、6ヶ月契約で4、50万も支払われるそうです。節約さえすれば、1年で200万以上の貯も可能です。
ここまでは夢のような話ですが、仕事内容は、ネジを締める等、だれにでもできる単純作業のため、いくら働いても技術の習得になりません。労働時間の間は一切無駄な時間なく流れてくるベルトコンベア(ライン作業)に追われることになり、相当の体力、それ以上の精神力が必要とされます。ルポライター鎌田慧氏は「だれにでもできて、だれにもできない仕事」と著書に記しています。契約が終了すれば、寮を出なければならないため、ずるずると期間工を続けるのもいるし、失業保険で三ヶ月遊んで暮らし、また期間工に戻る「期間工スパイラル」というサイクルに嵌るものもいます。
労働法により、期間工として3年以上は働くことはできません。本工という正社員登用の道も開かれていますが、あくまで建前に過ぎないようです。
期間工という生き方は、今の日本の不確かなフリーターという生き方の輪郭を浮き彫りにする象徴的な存在と感じました。
中略
不確かな未来だから、夢と希望があります。もし「天国」という、安穏としたどこまでも確かな未来が存在したとしても、夢も希望もないと思うのです。
不確かだからこそ、この現世は涙と笑いに満ちているのでしょう。
以下略
ブラジリィー・アン・山田

【キャスト】
サトウ(期間工):西山聡
マヤ(居酒屋おもひで女将):山田祐美(無機王)
トモノ(期間工):辰巳智秋
タケダ(期間工・ベテラン):本間剛
カツラギ(期間工):若狭勝也(KAKUTA)
コウサカ(期間工):諫山幸治
マコト(期間工):こいけけいこ(リュカ)
リュウ期間工・新人):山本了(同居人)
アキヤマ(?);中川智明
以下ネタばれ
ちらしのご挨拶から想像していた内容とは少々違いました。期間工達の話ですが、その期間工というのは設定としての役割であり、話の中身は男と女の関係です。
いきつけの居酒屋の女将(謎の女性)と期間工達のからみ。期間工同士の恋愛。フィアンセの病気を治したい期間工。先輩の奥さんを妊娠させてしまい、30年間養育費を支払わなければならない期間工プロ野球選手だったが、性癖のために辞めざるを得なかった期間工。それぞれに様々な逃げようのない過去を持ち、それが故にそこで働いている期間工達。そんな彼らをユーモアたっぷりに、そして時にはブラックに描いています。
たまたまだと思いますが、居酒屋が舞台と言うことで阿佐ヶ谷スパイダースの「少女とガソリン」と重なる部分がありました。また、工場関係と言うことでKAKUTAの「甘い丘」とも重なる部分がありました。
若しかしたら私より少し下の世代(30代)には、こういう閉塞感?日常感?があるのではないでしょうか?
そこまで広げなくてもいいか。この芝居に限定すると、非常に面白かったです。評価にばらつきを感じるが、それがこのユニットの魅力でもあると思います。
出演者ではこいけけいこさんがインパクト大でした。単純に背が高い女性って舞台で映える。ああいう使い方は、好きです。トモノはマコトを受け入れるべきだと思ってしまうのは危ない?