完読No.26 僕たちの終末 機本 伸司 著 ハルキ文庫

裏表紙

二〇五〇年、太陽活動の異常により人類に滅亡の危機が迫るなか、ネット上には"宇宙船をつくりませんか?"という怪しげなサイトが立ち上げられていた。詐欺とも思えるサイトの首謀者に接触するため、スタッフに応募した瀬河那由は、その人物が天文学者の神崎であることを知る。宇宙船を作るという無謀な計画に巻き込まれた那由は、父親と神崎とともに"ワールドエンド・スペーストラベル"を立ち上げるが…。待ち受ける難問の数々を乗り越え、宇宙船を作り上げることはできるのか?傑作長篇SF。

以下ネタばれ
思っていたのと全然違う作品だった。人は自分が死ぬ運命にさらされた時に何をするか?しかも、その運命は回避できない。この本では、太陽活動の異常。シェルター等地球上で生きる道を選ぶ。宇宙へ飛び出して生存可能な星へ行く。主人公達は後者を選んだ。選んだのだが、そちらの道は大変。約50年後の世界だが、恒星間宇宙船を作るのは簡単ではない。技術的、金銭的、政治的、人的etc.様々な問題を解決しながら計画は進む。その悪戦苦闘が面白い。SFとはサイエンス・フィクションではなく、シチュエーション・フィクション(私はそう思っています)だと感じる一作。途中、大幅にカットするが、急ぎすぎの印象はない。丁度、飽きかけている辺りなのでグー。ラストは・・・・。続編も書けるね。宇宙バージョンと地球バージョン。難しい話を平易な言葉で身近なものに置き換える書き方はうまい。マクロ(宇宙船建造)とミクロ(男女間の愛情)、一見相容れないようだが、意外と人の行動はこういうものに左右されるのねって作品。次回作に期待。