トゥー・ブラザース 試写会 ガスホール

★★★☆☆
ネタバレ

セブン・イヤーズ・イン・チベット」「子熊物語」のジャン=ジャック・アノー監督作品
世界が泣いた!!誰にもうばえない、愛と友情と、命の輝きー。
アカデミー賞に名を残す、一流のスタッフ・キャストが総結集!
2005年の、アカデミー賞に早くも最有力の声!
以上 チラシからの抜粋。
万が一、この作品がアカデミー賞を獲ってしまったら。私の映画鑑賞人生をもう1度「スター・ウォーズ(生まれて始めてみた字幕映画)」からやり直す必要がある。
何が悪いと言うわけではない。子虎は可愛いし。虎の表情も豊か。準備された虎は30頭。凄い努力。遺跡も本物を使っているだけに質感が重厚。一瞬、セット?と思ったが、それ程カメラが上手かったと言う事でしょう。
しかし、泣けない。心も熱くならない。仕事をブッチ切って帰ってしまったので後ろめたさがあったのは確か。でも、いい映画というのはそんな精神状態でも面白いもの。
この映画にはそれ程の力は無かった。
もう少し精査してみよう。
まず、タイトル。「トゥー・ブラザース」虎の兄弟がone。少年(フレディ・ハイモア)とハンター(ガイ・ピアース)がTwo。違うのかな?チラシにも書かれていない。
で、そうするとTwoの少年とハンターのつながりが弱い。
別の考え、虎の兄弟がOne。虎(サンガ)と少年、虎(クマル)とハンターがTwo。
で、そうすると個々の結びつきが弱い。
誰かトゥー・ブラザースの意味を教えて下さい。
少年がサンガを愛し、ハンターがクマルを愛しているとつぶやく。
逃げた二頭を殺そうとするハンター。止めてと懇願する少年。
本気?クマルと一緒にいたのって数日でしょう。それもドロップあげただけ。それで愛しちゃうの?いくらガイ様でもそれは無理がある。
少年にしても虎とコミュニケーションが取れるほど長い期間一緒にいないし。
人間二人の虎に対する愛情が今一観客(私)に伝わってこない。それがこの映画の弱点だと思う。
劇中での会話。
ハンター「1度人に飼われてしまった動物は獲物を取れなくなる。人間や家畜を襲うようになる。誰が獲物の獲り方を教えるんだ。二頭があんな状況に陥ったのは私のせい。これが終ったらハンターを辞める。」
少年「今辞めてよ。あの二頭は人なんか襲わないよ。」
この会話がこの作品の全てを物語っている。
何か事を起こしてから処罰するか、事を起こす前に処罰するか。
何となくイラクアメリカの関係を思い出した。
人間ドラマは全く無しにして虎の事だけ描けなかったのか?
思い切って「ベイブ」風にしたほうが泣けたと思う。
次に音楽。
虎が出ているシーンにやたらと音楽が流れます。確かに虎の気持ちを音楽で補足したいのは分かります。悲しいシーンで悲しい曲を流したくなるのも分かる。でも、あれだけ虎の表情が豊かなのだから音楽はそれ程いらないでしょう。十分観客に伝わります。逆に音楽が強すぎて嘘っぽくなる。それがある意味一番残念。音楽の使い方が下手でした。
ラストの虎同士の戦い。
虎は仲間同士で戦わない気がする。そんな場面見たこと無いし。虎と人間が戦うのは分かる。
期待が大きかっただけに失望も多い。素直な心で見ればもう少し感じる事が出来ただろう。
残念。立ち見まで出た試写会でした。映画が終るとタイトルロールの途中で、皆一斉に帰り支度を始めた。それがこの映画に対する評価なのかな。