No.特別 「鈍獣」 WOWOW

★★★★★
タイミングが悪く上演中に観れなかった作品。
脚本:宮藤官九郎
演出:河原雅彦
出演:生瀬勝久池田成志古田新太西田尚美乙葉野波麻帆
生瀬、池田、古田のねずみ3銃士が宮藤官九郎に脚本を頼んで実現した舞台。
生瀬勝久池田成志古田新太の3人がいいです。ホストクラブの店長、常連客、作家(店長と常連客の中学時代の同級生)。この3役は誰がどの役を演じても成り立つと思う。事実、役者が考えた配役と脚本家が考えた配役と演出家が決めた配役は違う。
演出家が決めた配役は、常連客:生瀬勝久、作家:池田成志、店長:古田新太
以下ネタバレ

行方不明の作家を雑誌記者(西田尚美)がホストクラブに探しに来たシーンから始まる。
その前にキオスクで道を聞くシーンがある。このキオスクに3人のオバちゃんがいる。そのオバちゃんを生瀬、池田、古田が演じる。このシーンだけで充分面白い。
作家は何故行方不明に?その謎を登場人物への雑誌記者のインタービューを通じて解き明かしていく縦糸。登場人物の相互の人間関係を横糸に話は進む。
作家のあだ名は凸川(デコガワ)。店長と常連客の小学校時代の同級生に凸川というあだ名の子がいた。中学生時代、その子に似ているので凸川とあだ名がついた作家。話が進むにつれどちらの凸川の事を話しているのか分からなく。その辺の噛み合わない会話も面白い。
あだ名のつけ方、人間関係は宮藤官九郎風。
作家が書いたのは店長と常連客の昔ばなし。他の地方の人には分からなくても地元では二人の事を書いているのは一目瞭然。書いて欲しくない事が書かれているので困る二人。
そしていきなり店に来た凸川。凸川が中学時代の事は殆ど覚えていない。本当に凸川が作家なのか?
鈍獣」と言うタイトルは、「にぶい獣」。「にぶい」人。
触れられたくない過去を平気で書く凸川。
幾ら苛めても全く意に介していない凸川。
毒を盛られても全然死なない凸川。
兎に角にぶい凸川。そのにぶさ故に周りの人が徐々に壊れてくる。
前半は笑わせに走る。後半は前半で笑っていた部分が笑えなくなってくる。一応ホラーなのでその辺はジワジワと来る。
再演はしない主義(生瀬勝久)だそうなのでこの演目は無いだろうが、他の作品でこの3人を見てみたい。女優陣では西田尚美さんがいいです。一人だけ客観性を持った役柄でしたが、最後には壊れてしまった。