完読No.80 なんといふ空 最相 葉月 著 中公文庫

会社勤めをしていた頃の忘れがたい思い出「わが心の町 大阪君のこと」、小学生時代の不思議な体験「側溝のカルピス」、競輪の取材をしていた頃に出会った名選手へのオマージュ「鬼脚の涙」-懐かしく、切なく、甘くそして苦い記憶の数々を繊細な筆致で綴った珠玉の四十八篇。
絶対音感』『青いバラ』の著者による初のエッセイ集。解説 重松 清

背表紙より
私は女性作家のエッセイは殆ど読んだ事がないです。避けているわけじゃなく、なんとなく。
絶対音感』の作者の初エッセイ。硬質な感じかと思ってましたが、エッセイなので柔らかな感触でした。でも、そこはノンフィクション作家。時折鋭い分析もあり楽しめました。週刊誌に連載していたものが中心。

毎週月曜の朝が締め切りというハード・スケジュールで、四百字X5枚半という原稿量のエッセイを書きつづけるのです。

あとがきより
誰にも頼まれてないけど、私も挑戦してみようかな。
それはさて置き。『なんといふ空』というタイトルは種田山頭火の秋の句から名付けたそうです。

なんといふ空がなごやかな柚子の二つ三つ

バラエティに富んだエッセイ集。私もこんな文章が書けるといいなぁ。
重松清氏の解説もチカラが入ってます。

 文庫版というハンディな装いになった本書を、特に若い読者の皆さんには、ずっと手元に持っていてほしいな、と思う。繰り返し読むといい。そのたびに、あなたは、その折々のあなたにふさわしい贈り物を本書から受け取るだろう。優れた青春詩集がどれもそうであるように。
 なんといふ空にちりばめられた四十八の星たちを、あなたはどんなふうにつないで、あなただけの星座をつくっていくのだろう。

解説より
83.2