No.40 ゆれる 新宿武蔵野館 

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1.★★★★☆←客観的な目で見た評価
2.★★★★★←思い入れを含んだ評価
意外と言うか、かなり面白かったです。見に行って良かった。
以下ネタバレ
どの辺りから書こうか。先ず、凄く真剣に見てしまった。普段はこう言う静かな感じの映画は見ないんです。友達が見たがっていたのと、真木よう子さんが出るので見に行きました。そんな動機の割には集中して見れました。これは、この映画に見るものを引き付ける魅力があったからでしょう。どこにその魅力があったか?例えば、伏線の張り方。弟・早川 猛(オダギリ・ジョー)が幼馴染・智恵子(兄と一緒に働く女性)(真木よう子)を車で送り家に着いた時の兄・早川 稔(香川照之)との会話。この会話で兄は弟と幼馴染が関係を持った事が分かった。そしてこの会話を交わさせることにより、兄がいい人で、お人よしな、やられたらやられっぱなし、それだけの人ではないと言う事を表現している。この繊細な表現に魅力を感じた。会話と言えば、幼馴染と弟の会話。関係を持った後に食事を作る千恵子。「猛君は嫌いな食べ物、椎茸だけだよね?(正確ではない、ニュアンス)」「(小声で)昔はね・・・」その言葉に振り向き佇む。結局、食事をせずに帰る猛。もう昔の俺じゃない。それをくどくど説明せず、一言で表現する。更に、稔の勤め先、ガソリンスタンド。稔が拘留されているのでバイトを雇う。そのバイトがアホで、デブ。そのバイト君を居酒屋での酒盛りに登場させる。台詞は無いが、見た目デブだし、アホっぽい。ストーリーには直接関係無いが、こう言う、茶目っ気がいい。
そして、これは言葉ではないが、気になるシーンとして。猛が忘れたタバコの箱。匂いを嗅ぐ智恵子。因みにこれは男性には分からない感情だそうです。私は気になりませんでした。友達はここを「分かるなぁ〜」と言ってました。
表現(撮影)の部分。法事の席。猛の言葉に激昂した父・早川 勇。お膳をひっくり返す。それを片付ける稔。そのズボンのすそに倒れたお銚子から酒が垂れる。ポタポタと。そこが妙に悲しかった。
そして居酒屋で出された鯛の生き作り。頭のドアップ。これは監督よりカメラマンの分野か?物語に直接関係は無いが、妙に覚えているシーンです。敢えて、ストーリーには触れませんでした。ネタバレと書いているのでこれから見る人は読まないと思いますが、念のため。決定的なことは書かない方が面白い。
一番、印象的だったシーン。ラストシーンの稔の表情。猛はあの場面、泣くしかない。それを見た稔がどういう顔をするのか?それでこの映画の方向が全て決まってしまうような大事なシーン。稔はどんな表情をするのか?固唾を呑んで見ていました。結果は?内緒。見た人だけ分かってください。
友達とも話しましたが、この映画は同姓の兄弟がいる人にとっては非常に分かる映画でした。私は弟がいます。友達は上と下に挟まれています。なのでよく分かった。他の作品を見てみたかったのでhpで確認したら、「『female』にて、乃波アサ原作の短編小説を脚色・演出した「女神のかかと(主演・大塚寧々)」を発表」とありました。これ見てます。感想:http://d.hatena.ne.jp/doradora0511/20050512
今思うと、他の作品に無いエロティシズムがあった。それは女性だからと言うより西川美和監督だからだったのか。
追記:猛(弟)と稔(兄)の対比とともに、二人の父親とその兄(弁護士、蟹江敬三)を対比させる。都会で華やかな、尊敬を受ける仕事をする兄弟と田舎で地味に家業を継いだ兄弟の対比。さりげなく。
追記2:橋の上での千恵子と稔のやり取り。不安定な橋の上。危ないよと支えようとする稔。しかし、それは橋をさっさと渡り成功した猛に比べ、あまりにも不恰好。事実、稔はこの橋が苦手、支えると言うよりつかんで離さない感じ。それが、この田舎から抜け出せない、自分を引っ張る様々なしがらみに思えて拒絶する千恵子。その時の千恵子の「離してよっ」的な表情がいいです。真木よう子さんをこの役にしたのはこのシーンのため?と思わせるほどいい。私はMではないけど、この表情で言われたらやばい。
追記3:この映画はオダギリジョーが主演です。でも、稔の映画です。稔役の香川照之さんが上手いです。色々なシーンにそれが出ている。助演男優賞をあげたい。