完読No.85 犬坊里美の冒険 島田 荘司 著 KAPPANOVELS


裏表紙

死体消失事件の謎と、司法制度に巣くう冤罪の構造-。司法修習生・犬坊里美が活躍する新シリーズ第一弾!
雪舟祭のさなか、衆人環視の総社神道宮の境内に、忽然と現れて消えた一体の腐乱死体!残された髪の毛から死体の身元が特定され、容疑者として、ひとりのホームレスが逮捕・起訴された-。しかし、死体は、どこに消えたのか?そして、被告人の頑なな態度は、なぜなのか?司法修習生として、倉敷の弁護士事務所で研修を始めた犬坊里美は、志願して、その事件を担当した!里美の恋と涙を描く青春小説として、津山、倉敷、総社を舞台にした旅情ミステリーとして、そして仰天のトリックが炸裂する島田「本格」の真髄として、おもしろさ満載の司法ミステリー、ここに登場!

久しぶりにスピード感を持って読めた作品でした。仰天トリックもその方面を全く考えていなかったのでビックリ仰天。犬坊里美の性格設定が読者に受け入れられるかどうかは別として、今までの島田さんの作品とは少々違ったタイプの作品でした(初期の頃に書いた「夏、19歳の肖像」みたいな、違うかな?)。
以下ネタバレ
被告は変態で女性のスカートの中を覗き見するのが大好き。接見に行っても「パ○ツ見せてくれ〜」って言うばかり。男としては最低のタイプ。でも、当然のことながらそんな事で被告から証言を引き出せないし、恥ずかしいので里美は泣きながらも気丈に(変か?)踏ん張ります。彼女の心のよりどころは石岡君(もう君って歳じゃないね)。彼の悲しみに満ちた人生から得た言葉が里美に勇気を与える。そのやり取りがいいです。「悲しみを力にかえて・・・」(ケンシロウか!補足:北斗神拳究極奥義「無想転生」は悲しみを経験しないと会得出来ない。)。しかし、よく泣く主人公だ。ごく普通の女性より泣くね。これが連載されていたのは女性自身。女性読者用にこんな性格設定にしたのか?男性向けのような気もするけど・・。島田さんの描く女性は大体性格悪いし、苦労している。この犬坊里美には当てはまらない。そういう意味では新しい挑戦かも。
2時間ドラマにしやすい設定に思えたのは私だけ。もし、ドラマ化したら誰が演じるか?仲間由紀恵か、チョッと違うか?ミニスカートが好きで○が無くて泣き虫。宮崎あおい?映画化かもしれない。
あと、へぇ〜が一つ。死刑囚は刑務所ではなく留置所にいる理由。死刑がかせられた刑罰だから、それまでは何もする必要が無い。暴論を言えば死刑が執行されるまでは娑婆で過ごしてもいい。なぜなら死ぬ事以外はすること無いから。労働も何もかも。そうはいかないから留置所に入れるみたい。へぇ〜。みんな知っているかな?