完読No.101 文壇アイドル論 斉藤美奈子 著 文春文庫


WEB本の雑誌 今月の課題図書に取り上げられていたので購入。
裏表紙

「文学バブルの寵児」ともいえる村上春樹俵万智吉本ばなな。「オンナの時代の象徴」となった林真理子上野千鶴子。「コンビニ化した知と教養の旗手」立花隆村上龍田中康夫ー。膨大な資料を渉猟して分析した、80〜90年代「文壇アイドル」の作家論にして、すぐれた時代論。斎藤美奈子の新骨頂!解説・松浦理英子

1996年から2001年にかけて雑誌に掲載されたものに、加筆して2002年に出版。2006年に文庫化。書かれてから10年ほど立つものもある。多少の変化はあるものも、的を得ている論だと思う。出版物そのものへの批評だけではなく、その出版物(敢えて、小説と言わないのはエッセイもインタビューもその他諸々含まれるから)への批評への批評を(どちらかといえばそれが主)書いた1冊。主に80〜90年代に表舞台で華々しく活躍した人々。それへの批評を批評することで、80〜90年代論にもなっている。その年代は、多感な時期(中、高校、大学)だった。まだ、紅顔(厚顔の間違い?)の美少年(人は自分には甘くなる)の頃。偶然ですが。1ヶ月の間に80年代を考察する本(東京大学「80年代地下文化論」講義http://d.hatena.ne.jp/doradora0511/20061123)を立て続けに読んだ。決して、あの頃に戻りたい的な感傷は無いのですが、もう一度自分だけでなく、人はその時代をどう過ごしてきたのか?考えたのか?知りたくなった故でしょう。まぁ、本当はたまたまなんですけど。1本道を1度ずれても20年も経てば大きくそれてしまう。もう一度、まっすぐ歩いてみたいという訳ではなく、別の方向に1度ずれたい。そんな気持ちになっている今日この頃。この本の話から大分それてしまった。
別にわざわざ言うことではないが、ここに取り上げられた人々の本を、私は2冊しか読んでいない。村上春樹の「海辺のカフカ」と「ノルウェイの森(全く内容を覚えていない。本当に読んだのかも危うい)」。いかに、ベストセラーが嫌いかわかる。マイナーが好きなのではなく、単なるへそ曲がりなだけ。
それはさて置き、WEB本の雑誌の批評にこう言うことを書いた人がいました。
hpからの引用

切り捨て御免! 作家を批評する、批評家を撫で斬り。それなりに、楽しめる。作家自身を直接批評するのでは無く、作家を評価した批評家を批判する、ちょっと変わった書き方。もちろん、遠回しに作家を批判している様に感じるのは言わずもがなである。
 文壇の人気作家8人を評論する、「作家論論」を目的に書かれたモノ。ベストセラー作家:村上春樹俵万智吉本ばなな、女性論客:林真理子上野千鶴子、知識人:立花隆村上龍田中康夫
 確かに8人の中には、消えつつある人、方向性が変わった人、趣味じゃ無い書き手も含まれている。それでも、他人の言葉を借りて作家を評価する姿勢に若干の嫌悪感を禁じ得ない。この本自体の意義がどれほど有るのかと考えると、より一掃、著者自身の言葉で批評して欲しかった。「あほらし屋の鐘が鳴る」の時も感じたのだが…売れているモノや、売れっ子作家に嫉妬している様に感じるのは気のせいなのか?

一言だけ、単純に批判はしてないと思います。「作家論論」を進める上で批判的な批評も取り上げるのは当然。あくまでも批評の批評を通じての「作家論論」であり、作家論を通じての時代論であると思います。少し的外れ?
他人の批評など関係ないのですが、この本自体が他人の批評の批評を通じて論を展開する内容なので敢えて取り上げました。