完読No.94 サマータイム 佐藤 多佳子 著 新潮文庫 


裏表紙

佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈。たがいに感電する、不思議な図形。友情じゃなく、もっと特別ななにか。ひりひりして、でも眩しい、あの夏。他者という世界を、素手で発見する一瞬のきらめき。鮮烈なデビュー作。

以下ネタバレ
「しゃべれども しゃべれども」の佐藤多佳子さんのデビュー作。4つの連作短編。
サマータイム(ぼくと佳奈と広一の出会いと別れ)
・五月の道しるべ(佳奈とぼく(進)の話)
・九月の雨(広一と母と種田さんの話)
・ホワイト・ピアノ(佳奈と千田さんと広一の話)
少ない登場人物たちが、非常に生き生きと描かれている。描写がうまい。私のお気に入りは佳奈。強気だけど、子供っぽい奇麗な女の子。