完読No.51 東京感動料理店 昭文社

doradora05112005-07-01

プロローグ
飲食店の好みというのは、きわめて偏愛的である。
誰と行き、どんな料理に出遭えたか。心温まるサービスが受けられたか。その夜、心地よい酒に酔えたか・・・。個人の印象が色濃く反映されるのものだ。
「好きな店」には、その店の客にしか持ち得ない、一期一会のストーリーがある。
ここに上辞する本には、筆が冴え渡るフードジャーナリストと、各界で活躍するきっての食通が登場し、自分が惚れ込む店について、恋い焦がれる料理人について、記憶に刻まれた一皿について、その想いの丈を、熱く、時にせつなく読者のあなたに語りかける。
本書は東京のレストランの網羅的紹介を企図していないので、かの『ミシュラン』に付された格付けの星もなければ、国内外で評価を得ているグルメガイドのような店の点数化もしていない。掲載店は、開店してから日が浅い、まだあまり世に知られていない店から、燻し銀の料理長が腕をふるう老舗の有名店まで、バラエティに富んでいる。
食の嗜好はさまざまだが、それでも客は料理人の作る一皿に満足し、時に心を揺り動かされ、その「店」の客となる。それと同様に、好き嫌いはあるだろうが、この語り手が推す店には好感が持てる、この人とは趣味趣向が似ているな。そんな風に本書を愉しんでいただけたらうれしく思う。
人の短い一生の中で、食事が出来る回数は本当に限られている。願わくは、どうか本書があなたにとって、大切な人とのかけがえなのない時間を過ごすための一助になれることを。
前置きが長くなった。
そろそろ予約の電話を入れようか。

        • 『東京感動料理店』

持っていた本を行きの電車で読み終わってしまった。帰りに読む本を買いに本屋へ。月末で頭が疲れていたので軽めの本を探す。どれもピンと来ない。んじゃあ「マダムだもの(小林聡美著)」でも読むかとレジへ。するとレジにこの本のポスターが、まるで「買って〜、買って頂戴〜」と訴えかけるように目に入ってきた。全く意図しない本を買うのは楽しい。失敗も多々あるが、美味しい(面白い)本に出遭えた時は本読みにとって至福の瞬間。
結局、帰りの電車の中で読み終わってしまった。
料理の写真が綺麗に撮れていてとっても美味しそうです。
先日知った「コートドール」も紹介されてます。娘さんの誕生日に毎年通っているそうです。

初めて「コートドール」の扉を開けた、十一歳の冬の終わり。娘は、その夜食べた料理も、着ていた洋服もいまだに忘れることができないという。

どの店もこんな文章で紹介されてます。
フローラン・ダバディー氏も一文を寄せています。何故か最上のベトナム料理を紹介してます。それにしてもこの人の文章は全く日本人です。誰が書いたかを知らなければ外国人が書いたとは思わないでしょう。
全部の店にいってみたいが、先ずは誰と行くかを決めないと。探しているうちに1軒も行けなかったりして(笑)
巻末に紹介された店の地図が載ってます。初めて行く店なのでこれは嬉しい。さすが昭文社

おわりに
この本は、私たちの「本当の気持ち」だ。
フードジャーナリストの仕事というのは、読者の思いがあって初めて成り立つ。読者がどんな店に行きたいかという大前提があって店を選ぶからだ。もちろん良い店であるには違いないけれど。
しかし、では自分たちはどんな店が「好き」なのかと尋ねられると、答えは別である。誰に勧めるのでもなく、自分が好きな料理店を選ぶとしたら、どんな店が出てくるのか。「いい店」ではなく、「感動できる店」はいったいどこなのか。この本づくりは、そこから始まった。
小川フミオさんも、大本幸子さんも、梅谷さんも、さまざまな店で食べ込んでいる手練れだ。井出玲子は、おそらく日本で一番ワイン造りの現場を知っているジャーナリストの一人。私はただの酔っ払いで「食べ手」というアマチュアのプロだと思っている。
この本で挙げた店は、確実に、そんな私たちの心を打ったのだ。
今回ご登場いただいた、食に精通した方々も、きっと同じ想いで店をご推薦くださったと思っている。
繰り返して言う。
この本では、私たちが、本当に愛してやまない店だけを、たまさか、書店でこの本に巡り逢ったあなただけに、そっとお教えしている。
最後に取材に協力していただいた綺羅星のような店の数々と、この本に関わっていただいたスタッフの方々に、感謝とお礼を申し上げたい。
そして、この本を手にとって、読んでくださった、あなたにも。
酒ごはん研究所 坂井淳一

この本に何処かの書店で出遭ったら、手にとってご一読ください。
84.0