不満足な旅 ペンギンプルペイルパイルズ ザ・スズナリ

doradora05112005-11-21

★★★★☆
http://www.penguinppp.com/
2002年1月に初演した舞台の再演。中山祐一郎(初演)→宮崎吐夢(再演)。杉田ドンタク(初演)→吉川純広(再演)。他のメンツは初演、再演とも同じ。
作・演出:倉持裕、出演:小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡
ペンギンプルペイルパイルズ(以下、ペンプル)も10作目。最初に見たのが「不満足な旅(初演)」でした。一番芝居を観ていた頃でした。懐かしい。
以下ネタバレ
私の前列に座っていた数人が、バカ受けしていた。そんなに大爆笑するタイプの芝居じゃない。それが気になった。芝居自体は初演より笑いが多かった。これは宮崎吐夢さんの力でしょう。大人計画では2,3番目の位置にいますが、これぐらいの規模で観ると十二分に観客を持っていきます。
少し噛んでましたが、それもご愛嬌。出演者の名前を間違えるたは計算?
とある国のカーニバルを見に来た3人(恋人同士の男女とその女性の弟)。空港で女性の方が、世界を旅するバックパッカーに声をかける。その後、恋人同士が喧嘩して女性は一人で帰ってしまう。ホテルには男性と弟と旅人。それぞれ今日が初対面。何も会話が続かない。イライラと虚脱感がユル〜ク流れる。芝居はその時点からスタートする。その後、象に踏まれそうなところを助けられた出張中のサラリーマン。この国で、かつて女神に選ばれた女性。この二人を加えて互いに互いの事を知らない5人の男女が一部屋に集まる。初対面が故に鋭く突っ込む。それに対して戸惑いつつも本音をはく4人(1人(弟)は体調不良で早々に寝袋で寝てしまう。最後まで寝袋に入ったまま)。知らないと言う事が、お互いのコミュニケーションに影響して本人達はいざ知らず、他人(観客)が見ると面白い。笑えない話も他人事なら面白い。倉持裕の脚本の中では分かりやすい。きっかけも結末も語られないので非常に気になる。説明台詞を少なくした結果、こういう芝居になる。観客は他人事を楽しみつつ、不足部分を頭で付け足す作業が必要。流れに身を任せて楽しめる芝居ではない。頭を使います。その割に深刻な事、真理、爽快感、etc.そういったことは語っていない。後にひかない頭の使い方。私は好きです。
個々の役者に目を向ける。ペンプルの主催である小林高鹿。顔がいいのに、いつもてんぱっている。そんな役には彼しかいない。ぶち切れ方と屁理屈は既に十八番の芸になりつつある。
ペンプルの主演女優、ぼくもとさきこ。なろうたってこんな顔にはなれない。女性に顔のことを言うのは失礼だと思うが、彼女は変な顔です。その変な顔に、味があっていいです。でも、声と雰囲気は可愛い。女性には可愛がられそうなタイプ。玉置孝匡、この芝居でしか観たことが無い。いい人だそうです。この役には非常に合っている。吉川純広、芝居の間、殆どの時間寝袋の中にいる役だったので、演技については何もいえない。寝方がうまかった?
宮崎吐夢、良かったです。大人計画がらみだとカマキャラが多い。この芝居では、常識的なのか非常識なのか、よく分からない旅人を演じてます。彼の持ついかがわしさが、この役にはピッタリ。微妙な手足頭の震えは健在。今回はコーラスのシーンがあり、物凄く嬉しそうな顔をして歌っていたのが印象的。ぼくもとさきこが、うるさそうに耳を塞いでいたのは、案外本気かも。初演の中山祐一郎も良かったが、どちらかと言うとてんぱりタイプ。小林高鹿がてんぱりなので、てんぱりが重なる。その意味でコンビとしては宮崎吐夢の方がいい。
敬称略。
84.4