完読No.87 いのち 生命科学に言葉はあるか 最相 葉月 著 文春文庫

doradora05112005-11-23

帯の文句

生命誕生の瞬間に「人の手」が入ることの功罪とは!?
クローン、脳死、ES細胞、遺伝子診断・・・・
最先端の生命科学の過去・現在・未来に迫る

表紙の文句
いのち

生命誕生の瞬間に激変が生じている。ヒト胚、クローン、遺伝子治療・・・科学技術の急激な進化は、将来の人類に幸福をもたらすか。棋界の第一人者との対話から問題点を絞る!

最相氏のライフワーク。
12人との対話形式。

目次
序章:ドリーの伝言
第1章:痛い、もやもやしたもの
鷲田清一との対話
「僕は、自己決定という概念は極限的な状況でのみ使う概念だと思っている。そうしないと、これは自分のものだからどう処理したっていいという際限のない話になってしまう」
「人間が生きる意味というのは、偶然をどういうふうに意味のあるものに変えていくかということです」
第2章:宇宙のなかの人間
柳澤桂子との対話
「子供にとって自分のルーツってほんとうに大事です。これは自我の形成と深い関係があると思います」
「遺伝子の働きはみなさんが思うよりもっと強いんです。六十年以上生きていろんな家族を見てきますと、ああ、あの遺伝子はあんなふうに出てきたんだ、とわかるのです」
第3章:いのちの始まりと宗教の役割
島薗進との対話
国民感情の中に脳死臓器移植を好ましくないとする考え方が出てきたのは、必ずしも宗教界の影響ではないと思うんです」
生命科学は、世界の富裕地域のゆとりある生活をもっと高めたいというタイプの欲求であって、世界全体でどういう医療が必要かということに関しての配慮が薄くなっている」
第4章:科学者の社会的責任
中辻憲夫との対話
「やる限りはES細胞株をつくった研究所が所有して独占的に研究するのではなくて、みんなが使える公共財産にすべきだ」
「今、生命科学の最先端で問題視されていることは、人間の欲望や現代社会の成り立ちのほうに根本的な問題があるという気がするんです」
第5章:動物と人間の関係
山内一也との対話
「クローンは経済的な利益につながるものではないでしょうね。しかし、クローン以上に問題なのが、遺伝子組換え」
「研究者たちが動物福祉や動物の権利について哲学的な論理思考ができるかというとそうではない。教育されていなかったですから」
第6章:センス・オブ・ワンダー
萩巣シ樹徳との対話
「瞬時に植物の同定ができる人はほとんどいない。初めて行く地では不可能に近いです。植物を研究している人たちのほとんどは、踏みつけていても気がつかない人が多いですよ」
「野生動物と、目的をもってつくられた遺伝子組換え植物を同じレベルで見てはいけない。それが人間の知恵だというのであれば、有用植物という認識でやればいいと思う」
第7章:日本人の死生観
額田勲との対話
「きょうび、中高生がコンビニへ行くような感覚で中絶するような、人間の生誕に対しては粗雑な日本社会が、こと、死の問題になると全然違うということです」
「震災後、死者は高齢の女性が圧倒的に多いという新聞報道に接したとき、こういう記述がまかり通るのが今の社会で、それが脳死問題のひとつの側面でもあるなと思った」
第8章:先端医療を取材して
後藤正治との対話
「たどりついたところは、個々の『選択』ということでした。脳死と臓器移植は『ニ五パーセント医療』ではないかと思ってまいす」
「生死にかかわる医学問題については、厳密な事実関係の提示がまずあって、その上に議論がある。ジャーナリズムは最低限そうでありたいと思います」
第9章:宇宙で知る地球生命
黒谷明美との対話
「よく地球外生命を探している人がいうんですけどね、地球はとても幸運な星で、条件がそろって、これだけ多様な進化を遂げた星はない」
「今の科学の段階では、ゲノムがわかったからといって設計図が全部わかったわけじゃないですから、卵から複雑な形ができていくところをつくるのはすごくむずかしい」
第10章:遺伝子診断と家族の選択
アリス・ウェクスラー&武藤香織との対話
「遺伝子的な情報は、医学的にはそれなりに意味があると思います。でも同時にわれわれは遺伝子そのものではないということも忘れてはいけない」
「研究者である前に人間でありたいし、患者さんや家族と情報をシェアしながら一緒に進むという、研究者と研究される側の関係を作っていけるのではないか」
第11章:進化と時間の奇跡
古澤満との対話
憲法をいくら読んでも日本がどんな国かはだれも想像できないということと同じで、ゲノムをいくら解析しても猫がなぜあんな形をしているのかはわかりません」
「だからここで、進化には時間がかかるのかという大問題がでてくる。僕は進化は時間の関数ではないと思っています。変わるから進化なんです」
終章:未来

色々と読みながら考えた。一度読んだくらいでは処理できないぐらいの情報が詰まっていた。
下手に私の感想を書くより、目次をそのまま引用した方がいいと思った。この本は、まだ途中。
いのち2、いのち3も読んでいきたい。