完読No.17 青空の卵 坂木 司 著 創元推理文庫

doradora05112006-03-07

僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらさせれる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。裏表紙より引用。

たまたまかもしれないが、最近「いい人」の話が続いた。自分の事ではなく、他人の事を第一に考える人、と言う意味での「いい人」。この作品の主人公は、所謂ワトソン役の坂木司だ。友人(引きこもり)の鳥井真一の為に外資系の保険外交員(比較的行動が自由だから、何かあった時にすぐに動ける)になった程。因みに坂木司は男性。勿論、鳥井真一も男性。だからと言ってそっち系の話しでは無いです。男女間の感情では無いのでより純粋な感じで表現されています。私はこれほど他人に対して優しくはなれない。なので、かなりこそばゆい感じで読み進みました。でも、読後感は決して嫌なものではなく、清々しいものでした。これを読んだ後、特に自分の行動自体は変わらないと思いますが、変わったらいいなとは思います。チョッとした勇気を持って人に優しく出来たら、それは素敵な事だと思います。
以下ネタバレ
1.夏の終わりの三重奏
2.秋の足音
3.冬の贈りもの
4.春の子供
5.初夏のひよこ
1〜4は中篇。5.は短編。
私は4.がグッと来ました。父親を遠く離れた地から訪ねてきた子供。その子供を通じて自分の父親と向き合えるようになった鳥井真一。父と子の心の交流の機微が良く描けていたと思います。