No.27 道子の調査 ペンギンプルペイルパイルズ 下北沢スズナリ

★★★★★
http://www.penguinppp.com/works/michiko/index.html
前作が再演だったので、久しぶりの新作。期待して観に行きました。取ったのが楽日のせいでしょうか、超満員。まぁ、スズナリの収容員数と、ペンギンプルペイルパイルズ(以下PPPP)の動員能力を考えれば、こうなる事は当然でしょう。だからと言って、もう一回り大きな劇場でやるのは反対。PPPPは小さい劇場の方が圧倒的に面白い。
以下ネタバレ
これから大阪公演を観る方は、これ以上は読まない方がいいです。
兎に角、観終った後も、色々と考えてしまう内容だった。それは、内容が難しくて分からないとか、非常に心の奥底まで響いてしまいそこから抜け出せないとか、感動して何度も反芻してしまったとか、そういうことじゃない。この芝居では語られていない事が多すぎて、自分で補足しないと納まりがつかないんです。
hpにはこんな風に書かれてます。

人が一人消え、その名を仮にDとする。
Dを知る者を“証言者”とし、
“証言者”からDについて聞き出す女を“前任者”とする。
すべての“証言者”はDが消えたことに困っていて、
この状態を“D問題”と呼ぶことにする。
“前任者”もDが消えたままでは困るが、
こちらは“D問題”とは区別し、“無能”と呼ぶ。
“前任者”は“無能”のまま仕事を終えるが、
“D問題”は解決する。
なぜだろう?と首をひねる女が6年後に現れる。
それが道子。

「道子の調査」というタイトルになっているのでてっきり道子が主人公だと思って観ていました。しかし、道子は主人公ではなかった。これと言って主人公はいないと言うのが正しいと思うけど、あえて言うなら砂恵(さえ)(ぼくもとさきこ)が主人公になるんでしょう。
現時点でもどういう話なのか分かっていないので、と言うより何が起こったのか分かっていないので書きにくい。
6年前に失踪したナミコを捜すために派遣された調査員、砂恵。その砂恵もこの調査の途中で失踪。6年後再びナミコの調査を受け持ったのは道子(伊藤留奈)。尋問を受ける者達は7人。場所は調査会社の寮。場所が悪いので誰も使っていない。舞台はその1室。道子の尋問が続く。その途中で場面が砂恵の尋問になったりする。その辺がややこしい。
敢えてそうしているんでしょうが、一度観ただけでは整理できない。例えば、砂恵の尋問の時は成瀬(ストリップ小屋の店長、6年前はそこの店員)(玉置孝匡)と桑島(アパッチ(犬)の飼い主、借金取立人)(松竹生)は、会って話しているが、道子の調査の時には二人は会ってないんじゃない?同様に砂恵の尋問の時は蕨(作家)(加藤啓)と阿彦(四区出身、ギャンブルで多額の借金を作る)(小林高鹿)は会って話しをしているが、道子の調査の時は二人は会ってないんじゃない?尤もこの会ってない云々は舞台上の話であって語られていないバックステージでは会っているかもしれない。自分でも全くまとまりがつかない。兎に角、何があったのか?それが知りたい。ナミコはどうして失踪したのか?砂恵は死んでしまったのか?道子は、水着を着てどこへ飛び込んだのか?分からない。ミステリーと言ってもいい話なんだけど、兎に角語られていない部分が多すぎて話を構築出来ない。元々、こう言うタイプの話を作る人でしたが、今回の話が一番分からない。でも、その分からなさが好きです。役者陣も良かったです。特に砂恵役のぼくもとさきこ。例えば、最初の上ずった演技(一瞬下手?と思ったほど)も久しぶりの尋問で緊張してあがっているという状態をリアルに演じていました。細かいところを何度も稽古するらしい。その辺が現れた演技でした。砂恵を二人の男性が取り合うって構図があるんですが、ぼくもとさきこさんはどう見てももてそうに見えないんです。でも、演技力ですごく可愛く見えるんですよ。その辺も見所。DVDになったら絶対に買いたい。初めて脚本を読みたいと思いました。売っていたのに、買わなかった。後悔。
追記:ナミコに会っていない人が何人かいるんです。道子はそれに気がついたけど、砂恵は気がつかない。砂恵は明らかに調査員としての能力が無い。後輩や同僚に「死ね」とか言われてしまう。しかし、上司はそんな彼女に期待している。ナミコの調査を続けていくうちに、ナミコを頼っていた尋問者たちが徐々に砂恵を頼るようになってくる。砂恵はそのせいで・・・。砂恵はその状態に非常に充実感を感じていた。道子には砂恵の様に尋問者に頼られることは無い。そのことを指摘され落ち込む。最後の・・・はそのせいか?疑問に思ったことは何一つ分からない。そのまま。ほったらかし。でも、面白い。どういう風に脚本を書いたのだろう。舞台上の事を順を追って書いていったのか?それとも真相も含めて膨大な物語を書き上げ、そこから削っていったんだろうか?後者なら削る前を読みたい。前者ならどういう頭の構造してるんだ、倉持さん。
追記
アンケートを書いたらステッカーを貰った。ある意味これが何なのか?一番悩む。

追記2
http://homepage1.nifty.com/mneko/play/HA/20060827m.htm
「演劇◎定点カメラ」さん、リンクはらせて頂きます。
そこでアフタートークに触れていた。チラシの水着はぼくもとさんだという(文章を読み間違えていたらすいません)。かなり、でも妙に納得。意外に・・・。