完読No.92 彼女はたぶん魔法を使う 樋口 有介 著 創元社文庫

元刑事でフリーライターの柚木草平は、雑誌への寄稿の傍ら事件調査も行う私立探偵。今回もち込まれたのは、女子大生轢き逃げ事件。車種も年式も判明したのに、車も犯人も発見されていないという。被害者の姉の依頼で調査を始めたところ、話を聞いた被害者の同級生が殺害される。私生活でも調査でも、出会う女性は美女ばかりで、事件とともに柚木を悩ませる。人気シリーズ第一弾。

初出は1990年。若干古く感じるのはそのせいでしょう。でも、それを補うストーリー展開が面白かったです。
以下ネタバレ
ハードボイルドの基本って「減らず口」だと思うんです。私は。この場面でこんな事を言ったら相手が怒るでしょう、または、ここでは何も言わない方がいいよ、という場面で彼(彼女も)らは減らず口をたたいてしまいます。
そのせいで状況が良くなる事は、先ず無いけど、たたいてしまう。それが性分なんでしょう。まぁ、無口な主人公や話せない主人公はいますけど、私の経験ではハードボイルドの主人公は「減らず口」をたたきます。それが読者によっては「カッコいい台詞」に思えたり、「箴言」に聞える場合はあるし、そこがハードボイルドを好きな理由だ、という人も多いでしょう。この本の主人公である柚木草平もそうです。但し、彼の場合は、それを言うのは殆どが女性に対してです。そしてそれを言うと大体相手の女性は怒ります。結構いい雰囲気なのに、言わなきゃいいのに、言ってしまう。それが柚木草平の魅力でしょう。第二弾も読んでみよう。