完読No.86 動物園の鳥 坂木 司 著 創元推理文庫

裏表紙

春の近づくある日、鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。僕らの年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだ。高田さんが働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。動物園で鳥井が掴んだ真実は、自身がひきこもりとなった出来事とどうつながるのかー。鳥井は外の世界に飛び立てるのか。感動のシリーズ完結編、文庫版特
別付録付き。

以下ネタバレ
実は、このシリーズ。そんなに好きじゃないんですよ。いい人の温かい話なんだけど・・・・。何でだろう?そう思いながら買ってしまう。もしかしたら、自分でも気が付かないうちにこういう人間関係を望んでいるのだろうか?それは少々恥ずかしい。
このシリーズはミステリー(日常の謎を解く)なんですが、実際には謎を解く事によりあぶり出される被害者&加害者の心理状態を描いているから、ミステリーが駄目な人でも気にせずに読めると思う。特にこの3作目はその度合いが強い。引きこもりがちな探偵がひきこもり始める原因となったいじめ。そのいじめの首謀者?が出てきたり。ワトソン役の坂木司の重大な決心があったり。
謎がそっちのけです。
言っている事は正しいと思うけど、そのままストレートに書くと拒否反応が起こるでしょう。道徳の本になってしまう。なので、ミステリー仕立てにして、相手の心理状態(所謂、動機)をストレートに言っても違和感が無いようにしたのでしょう(違うかな?)。
本書からの引用。

こころが弱くて、とても弱くて。
いつも誰かに喜ばれたりありがたがられていないと不安で。
僕はこうやって生きてきた。
僕を手放しで必要としてくれる人の手を取って。
その人に支えられて。
そうやって生きてきた。

これは意外と気が付かないんだよね。結局、いつまでもそうしてはいられない。いつかは、離れなければならない。それを自らの意思ですることは非常に難しい。言い訳としていま自分が離れたら相手が困る。自分がいないと駄目なんだ、と言い聞かせてしまう。本当は相手を必要としているのは自分自身なのに。この本を読んで気が付いた。う〜ん、どうしよう。