完読No.36 アヘン王国潜入記 高野 秀行 著 集英社文庫


裏表紙

ミャンマー北部、反政府ゲリラの支配区・ワ州。1995年、アヘンを持つ者が力を握る無法地帯ともいわれるその地に単身7ヵ月、播種から収穫までケシ栽培に従事した著者が見た麻薬生産。それは農業なのか犯罪なのか。小さな村の暖かい人間模様、経済、教育。実際のアヘン中毒とはどういうことか。「そこまでやるか」と常に読者を驚かせてきた著者の伝説のルポルタージュ、待望の文庫化

高野さんの本は何冊か読んだが、やはりこれが一番ビックリする。所謂、ゴールデントライアングルと言われている地帯。その中でも一番の生産地への潜入(他にいい言葉が無い、やっぱり潜入になってしまう)。ハードボイルドな設定ですが、かの地の人々はいたって平和です。冒険活劇って感じでありません。それを期待した読者は肩透かしを食らうかも。どちらかと言えば「ウルルン」に近い。但し、滞在期間が長いのと殊更感動的なエンディングを用意していないので楽しく読めます。この本で一番ビックリしたのは、ヘロインとモルヒネは原料が一緒だということ。
ヘロイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%B3
モルヒネ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%83%92%E3%83%8D
上の二つを読めば分かります。兎に角、高野さんがワ州滞在中に政府?に出した建白書にそれが書かれています。
ケシからアヘンを作りヘロインに精製するのではなく、モルヒネにして売るべきだ。ヘロインは麻薬でやばいものだが、現実問題としてケシの栽培を止めてもそれに代わる物が無い。この地の人々は飢えてしまう。だったら今まで通りケシを栽培してそれを医療用のモルヒネとして売ればいい。そんな感じ。実際にそれをどう受けたのかは分からないが、一つの道ではある。