完読No.99 卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし 宇江佐 真理 著 講談社文庫


裏表紙

のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ−。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、中右衛門だった。
はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。中右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。

以下ネタバレ
のぶちゃんがいいんです。夫の正一郎はまじめで男ぶりもいい、役人だし女癖も悪くない。はたから見ていれば羨ましいほどのお似合いの夫婦。でも、正一郎はのぶに冷たい。のぶは子供を2回流産し、子供が出来ない事を悩んでもいる。そんな中、とうとう我慢できずに家を出る。家を出ても年若い従兄弟に懸想されるは、実家に戻れば小姑には煙たがられるは、いい事がない。救いは舅と姑が優しいこと。でも、それが離縁に待ったをかける。
この二人、このまま別れてしまうのかえ?
タイトルが美味しそうでしょ?でも、のぶが好き嫌いが多いので美味しそうな描写はそんなに出てきません。それが目当ての人は肩透かしをくうかも。
物語は、正一郎との仲をどうしようと悩むのぶの心の動きです。夫婦生活はいい事ばかりじゃない。一緒になってみないと分からないこともおおい。現代にも通じる男女の機微を、江戸時代の庶民の生活を通じて描く。いい話です。中右衛門がまたいい。今助(幇間)との会話が可笑しい。姑の毒舌も慣れれば優しさの裏返しと分かる。理想的な家族なのにね。
個人的には最後の話が良かった。登場人物が、みなちょろきが好き。私も大好き。黒豆よりちょろきを沢山出せとせがんだ少年時代。
ちょろき:おせち料理の黒豆に真っ赤なねじれた変な物が入っています。それがちょろき。
ちょろきだと思っていたら、チョロギだった。
↓こんなの。もう、大好き。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%AD%E3%82%AE
追記
WEB本の雑誌の9月の課題図書
http://www.webdokusho.com/shinkan/0709/b_2.htm