完読No.20 40 翼ふたたび 石田 衣良 著 講談社

doradora05112006-03-17

石田 衣良週間、第3弾。4TEENの爽やかさ、LASTの落ち込み、そして40の気持ち。
以下ネタバレ
年齢的にほぼ40歳なのでこの作品が一番面白かったです。
7つの短編(CONTENTS)。
主人公は、元広告代理店社員(今はフリーのプロデューサー)。先輩に引き抜かれる形で会社を辞めたが、うまく行かず、今はフリー広告マン。
「人むすび・人あつめ・40歳から始めよう〜なんでもプロデュースいたします」と謳うブログをやっている。そこにはかかわった仕事を掲載している(本人と特定できるものは伏せている)
1.真夜中のセーラー服
ロリコンのIT長者と27歳のロリータAV女優の話。殆ど罠にかけられたかのように不祥事を起こし、社会的に抹殺されてしまったIT長者。金だけはうなるほどあるが、心は満たされない。そんな彼を最後まで見捨てずに尽くす女性。
2.もどれないふたり
同窓会で久しぶりに会った友人(銀行員)。出世争いの相手も同級生。その両方から相談を受けた主人公喜一。出世争い、離婚問題。悩み多き不惑の世代。
3.翼ふたたび
17歳から23年間も引きこもる男性。その両親からの相談を受けた喜一。やっかいなものを引き受けたと思いつつ、何故彼は引きこもるようになったのかを解明する。
4.二つの恋が終るとき
大会社の有望株の男性と不倫関係にある元同僚の女性からの相談。「彼と別れるので新しい彼氏の役をしてくれ」。大人同士の切ない恋。
5.われら、地球防衛軍
フリーター暦20年近い男性。一念発起して新しいビジネスを始める。その広告を頼まれた喜一。見た目、オタクで言葉の端々に擬音が出る変な男。それでも喜一はしっかり仕事をする。そしてそれが新たなつながりを生む。
6.はい、それまでよ
間借りしている広告代理店のコピーライター。妻も子もいない一人身。彼がかかった病気は。そして、年下の女性の一念発起。
7.日比谷オールスターズ
喜一がまだ大手広告代理店に勤めていた頃。大成功させたイベントがある。その時の主要人物5人。名付けて「ゴールデンファイブ」。ある新雑誌のイベントプロデュースのコンペに呼ばれた喜一。この「ゴールデンファイブ」の再結集を考える。かつての栄光の影も形も無い4人と大成功したデザイナー。それぞれに今の生活に飽き足らない。そして集まった5人はあるイベントを企画する。そのイベントがクライマックス。泣けます。いや泣きました。

喜一の視点で語られる7篇。いまは落ちぶれているが、まだまだやれる。そんな喜一とかかわりをもった人々の繋がりが面白い。いかにもありそうな状況を設定し、優しく、登場人物たちを導くストーリーに共感する人も多いだろう。40歳と言えば不惑。でも、平均寿命が延びた現在ではいよいよ惑う年齢。がむしゃらに働けるほど若くないし、全てを受け入れ諦めるほど年寄りじゃない。そんな40代をリアルに描く石田衣良。流石です。