完読No.31 電子の星 池袋ウエストゲートパークⅣ 石田 衣良 著 文春文庫

doradora05112006-04-10

楽しんだIWGPもこれを含めて残り2冊。実質的にはこれがラスト。
アングラDVDの人体損壊映像と池袋の秘密クラブの関係は?マコトはネットおたくと失踪した親友の行方を追うが・・・。通り魔にギャングの息子を殺されたジャズタクシー運転手に告知された悲惨な真実とは?「今」をシャープに描く、ストリートミステリー第4弾。切れ味、スピード、さらに快調。解説・千住明(裏表紙より)

・東口ラーメンライン
・ワルツ・フォー・ベビー
・黒いフードの夜→この作品が一番すき
・電子の星
この文章が、印象に残った。

「だめだ、サワー。誰かにどうしたらいいかきいていたんじゃ、どこにいっても同じだぞ。自分がどうしたいのか、なにを望むのか、自分で決めるんだ。それができなきゃ、何千キロも海を越えて日本まで来た価値が無いじゃないか。おまえのとうさんが命がけでほしがった民主主義だぞ。こっちの世界は確かに天国じゃないし、くだらないところだが、それでも自分の人生は自分で選べるんだ。いいか、サヤー、おまえはどうしたい?厳しくても自分で考えて、未来を決めろ」(黒いフードの夜 より)

マコトの根本あるのはこれだと思った。特に自分自身ではなく回り(特に親)の影響で現在の状況になっている少年少女に対して、単に助けるんじゃなく自分で決めさせて、それに対して力を貸す。そのスタンスがあるから、この作品群は単なるお節介の心優しい青年の話しでは無く、その場所で生きている人々を描いていると評価されるんじゃないだろうか。「今」を書いているというより、「人」を「生きている人」を書いている。そう思う。マコトの更なる活躍を読んでみたい。