完読No.59 七人のおば パット・マガー 著 創元推理文庫


裏表紙

結婚し渡英したサリーの許に、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らせる友人からの手紙が届いた。ところが、彼女には七人のおばがいるのに、手紙には肝心の名前が記されていない。サリーと夫のピーターは、おばたちと暮らした七年間を回想しながら、犯人と被害者の見当をつけようと試みる。被害者探し、探偵探しと一作ごとに新機軸を打ち出し読者を魅了する才媛の代表的傑作!

久しぶりに読んだけど面白かった。
以下ネタバレ
安楽椅子探偵。個性豊かな家族。ドロドロの愛憎劇。新婚夫婦の絶望と希望。色々な要素が含まれてます。途中で犯人は分かりましたが(分かったと言うより思い出したと言うべきだが)、それを導く道程がいいです。不自然ではないストーリー展開。それは生き生きと描かれた(姪によって語られた)7人のおばたちの生き様に負うところが大きい。こんな家族は持ちたくないが、端で見ている分には面白い。血の繋がりはあるものの自分の父親の腹違いの妹達(一人父親の姉がいるが)なので客観的に見れた部分もある。ラストのサリーとピーターの希望に満ちた未来への眼差しが救い。これを元に脚本を書いてみたくなった。5〜6回の連続ドラマか、2時間半ぐらいの映画に出来そう。普遍的な設定なので舞台を現代日本にしても十分に楽しめる。
北村薫氏の解説にこんなベストテンが取り上げられていた。
中島河太郎氏の「推理小説ノート」の最後の章に載っているベストテン。
<鬼>誌のベスト・テン(1951年)
1.赤毛のレッドメーンズ:フィルポッツ
2.幻の女:アイリッシュ
3.グリーン家殺人事件:ヴァン・ダイン
4.僧正殺人事件:ヴァン・ダイン
5.バスカヴィル家の犬:ドイル
6.Yの悲劇:クイーン
7.怖がるべき娘達(本書):マガー
8.アクロイド殺害事件:クリスティー
9.樽:クロフツ
9.黄色い部屋の謎:ルルー(オペラ座の怪人の原作者)
9.闇からの声:フィルポッツ
10.813:ルブラン
10.男の首:シムノン
これだけの名作と伍して語られるべき作品です。私の感想よりこのベストテンが十分にそれを証明している。未読の推理小説ファンは是非!