完読No.66 グラスホッパー 伊坂 幸太郎 著 角川文庫


裏表紙

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとにー「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!

以下ネタバレ
所謂、業界ものです(おいおい)。殺し屋業界の内幕を・・・・。嘘です。でも、殺し屋を描いた話です。人物造形としては「押し屋」である男が一番ミステリアスで奥が深そう。鈴木は復讐をしようと思い立った割には甘いし、お人よし過ぎる。結局、あのラストシーンは非常に救われない感を残すものだが、一見ハッピーエンドだ。あちら側へ行ってしまえば、ある意味楽だし。ラストの数行でこの作品を傑作とするのはいささか強引かもしれない。どちらにしても傑作であることは間違いない。ただ、どの分野に分類していいのか分からない。
不屈の意思で復讐を成し遂げる男の話でも無いし、単にハードボイルドに分類するには登場人物の内面が書かれ過ぎているし、単に「殺し屋」小説でいい気もする。