No.19 ウラの目と銀杏の村 キコ qui-co.2nd birthday  王子小劇場

★★★★☆

舞台女優、こいけけいこさんを追いかけて、こんなところまで来てしまった。
キコは初観劇。
観る前にホラーと聞いていたので、少し二の足を踏んでいたが、観終わった後の
脱力感は相当のものだった。

この物語を一言で言うと「鬼と村人の闘い」になります。
なりますけど。別にそれは状況を厳しくする、切羽詰まったものにする道具だけ
でしかなく。
鬼V.S.人間、とした方が、説明しやすかっただけなんじゃないかな??なんて、
斜め目線で観てしまった。
尤も、そんな目線はその部分だけであり、その他の幾多の物語はかなりいいです。
「幾多」と書いたのは、一つに作品にするには、多すぎるほどの材料を詰め込ん
だ作品だからです。
それを可能な限り丁寧に拾っている(拾っているという表現が悪ければ、無駄に
していない)。
おそらく、元々の脚本は、実際の倍は分量があるのではないだろうか?
削って削って2時間弱。
一見するとごった煮風、とっちらかった印象を受けるが、元々の作品が持ってい
る熱を役者陣が更に熱くして演じる事により、小さい事はどうでもいい、おもい
にさせる。
結局、凄いとか面白かった、という月並みな表現でしか評価できない自分のボキャ
ブラリーの少なさに辟易した。

あくまで、個人的な好みなのだが、ウラ(鬼。鬼からもけがれた者ととして扱わ
れ、人間から鬼として忌み嫌われる女性)が、校庭で遊ぶ生徒たちを、かわいい
と感じ、いけないと知りつつ見に来てしまった。
そのシーンをラストに入れたかった。
甘いけど、甘いのは承知で、実際の芝居の苦しい、悲しい終わり方より。
一瞬でもウラが幸せを感じた瞬間で終わらせたかった。

アナザーストーリーとして、純子先生が村に来て色々あり、飛行機が墜落するま
でを書いて欲しい。
もう書いてある?

どこにも居場所が無いウラに、純子先生(既に死んでいるので幽霊?残留思念?)
が「ここにいてもいいんだよ」というシーンにジーンとしてしまった。

あとは、絶望的な状況になってしまった事に責任を感じるシンに、「もういいか
ら逃げな」と思わず声を掛けたくなった。
こうならないために25年頑張ってきたのに・・・・。魂の叫びです。

みなさん熱演でしたが、こいけさん(天然ボケ風な役柄は、全体的に暗い話に明
るい印象を付加する)、ウラ役の清水さん(まだまだ、いい役者さんがいるんだ
なぁ)、シン役の堀川さん(絶望的な状況に絶望しつつ、逃げずに向かって行く
姿がいい)が印象に残りました。
全体的に(人数の問題かも女優8人男優3人)女優さんが印象に残るお芝居でし
た。
次回作にも期待。