完読No.61 月曜日の水玉模様 加納 朋子 著 集英社文庫


裏表紙

いつもと同じ時間に来る電車、その同じ車両、同じつり革につかまり、一週間が始まるはずだったー。丸の内に勤めるOL・片桐陶子は通勤電車の中でリサーチ会社調査員・萩と知り合う。やがて二人は、身近に起こる不思議な事件を解明する<名探偵と助手>というもう一つの顔を持つように・・・・。謎解きを通して、ほろ苦くも愛しい「普通」の毎日の輝きを描く連作短編ミステリー

解説:西澤保彦
殺人事件が起こらない推理小説。最近ドラマ化された「ささらさや」なんかとは違うタイプの作品。雰囲気は似ているけど、どちらかと言うと謎解きが軸。
以下ネタバレ
毎日通勤していると電車に乗っている人々も結構覚えてくる。言葉を交わすわけではないが、意外と気になる人もいる。主人公片桐陶子にとっては、それが萩。曜日ごとにきっちりとネクタイを変えてくる(ようは5本をローテーションで回している)、背広は3着。ある日、そのローテーションが崩れた。何故?こんな風な謎が解かれていく。特別、刺激的な出会いではないが、萩は片桐陶子に非常に興味がある。でも、片桐陶子はそれ程でもない。その辺は、気になるけど結論は出ない。本の中の登場人物にだってプライバシーはある。何でもかんでもさらけ出すわけじゃない。この二人が後にどうなるか?それは二人だけの秘密。これは話には全然関係ないんですけどね。
片桐陶子がワトソン役で萩がホームズ役、ってわけではなく、話によってはこれが入れ替わる。その辺も面白い。
一見、楽しげな話ですが、そこは加納さん、暗い翳は入れてます。主人公片桐陶子の過去。それは本の中で明らかにされるが、悲しい過去です。