完読No.37 白夜行 東野 圭吾 著 集英社文庫

1973年、大阪の廃墟のビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂ー暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人に周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年・・・・。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇!

以下ネタバレ。
なんと言えばいいのか。兎に角、傑作である事は間違いない。内容も文章も構成力もどれをとっても完璧。また、完璧にしないとこの物語は出来上がらなかった。細かい事は、既に色々な人が言っていると思うので敢えて書きませんが、傑作の要因がどこにあるのかと一つだけあげるとすれば、やはり主人公二人を一度も一緒に登場させなかった事でしょう。そして、二人の心情を一度も描かなかったことでしょう。解説で馳星周さんが言ってましたが、かのレイモンド・チャンドラーで挫折?成し遂げられなかった手法を東野さんは見事にこの作品で結実させている。それだけでもこの本は凄い。個人的にはそれぞれ二人に絡んだ人物の扱い方に若干の疑問点はあるが、それは大した事ではない、そう思わせることも分かって、敢えてそういう扱いにしているんでしょう。亮司と雪穂に東野さんのダークな部分の二面性を見た気がしました。読者を自分の手の平の上で弄ばせたら、東野圭吾の右に出る作家はいない。
ドラマ版はどうなっているんだろう?主人公二人を全く接触させずに済ませたのだろうか?それとも回想シーンか何かで接触させたのだろうか?見てみたい気はする。