魔術師(イリュージョニスト) ジェフリー・ディーヴァー/著 文芸春秋

恩田陸さんの「黒と茶の幻想」を読むつもりでしたが、WEB本の雑誌の課題図書に取り上げられていて評価が高かったので先に読みます。
読む前はこのミスの1位はこれで決まり!ぐらいの勢いがありました。
結果は・・・・

以下ネタバレ、未読方で読む予定の人はご遠慮下さい。



結果は、面白かった。但し「コフィン・ダンサー」は越えてません。「悪魔の涙」も越えてない、かな。
マジック(イリューション)とミステリーの融合をはかった著者の意気込みと仕掛けは十二分に感じ取れました。ディーヴァー得意のどんでん返しも随所に仕掛けられています。
しかし、やや物足りない。理由はなんだろう?スピード感、緊張感、意外な犯人・・・etc。
恐らくはディーヴァーに対する期待が高すぎるのが原因でしょう。ディーヴァーの作品を初めて読む人であれば本年度No.1海外作品は「魔術師」で決まり。
発売された時期も遅いのでこのミスの2位か3位が妥当な所。週刊文春のベストミステリーでは1位です。間違いない。
マジックとの融合で言えば、日本人もある作家が書いてますが、それに比べれば十二分に面白いです。因みにある作家は泡坂妻夫氏では無いです。念のため。泡坂妻夫氏の「11枚のとらんぷ」や「奇術探偵曾我佳城」等とは趣が違います。
今回のテーマは「誤導(ミスディレクション)」です。ミステリーでも多く使われますが、下手にやるとアンフェアだという事で読者からの批判を受けかねない。
魔術師では、犯人が警察側(リンカーン・ライム&アメリア・サックス)に対して「誤導」を仕掛けるので、アンフェア感は無い。その意味では非常に良く出来た作品です。
一種の叙述式トリックですが、最後の最後まで真犯人は分かりません。
ラストにはまるで映画のNGコーナーのようなおまけまであります。最後の1ページまで楽しめる作品です。
ハードカバーなのに巻末に解説があります。書き手は法月綸太郎氏。