消失 ナイロン100℃ 27thSESSION

★★★★★
2004年は夏に上演された「男性の好きなスポーツ」に続いて本公演2本目。「男性の好きなスポーツ」が良かっただけに期待が膨らむ。席はE列、近からず遠からずいい席でした。
舞台装置はある部屋の中。1階。2階へ続く階段有り。台所では鍋が火にかかっている。右手奥にダブルベット。真中後方にストーブ。その手間にクリスマスツリー。天井にはダクトが数本。チョッと普通の家とは違う感じ。
以下ネタバレ
芝居が始まる。男性二人が登場ツリーに飾り付け。背が高いのと低いの。人間関係は未だ不明。
どうやら兄弟らしい。背の高い方が兄、チャズ・フォルティー大倉孝二)。背の低い方が弟、スタンリー・フォルティーみのすけ)。
どうやらみのすけには好きな女性がいるらしい。告白しろよとせっつく兄。この辺は笑いが多い。そして暗転。スクリーンが登場。この物語のスチュエーションが軽く紹介。
どうやら戦後直ぐの何処かの国らしい。チャズは39歳、スタンリーは34歳。二人の両親は28年前に離婚して二人を残して出て行った。それから二人はこの家で二人っきりで生活した。
場面は次の日。
クリスマスパーティーは失敗。スタンリーが作った料理には女性なら誰もが好きなアサリが入っていた。が、貝アレルギーのホワイト・スワンレイク犬山犬子)は食べた瞬間泡を吹いて倒れてしまう。落ち込む弟。そんな中ドーネン(三宅弘城)が登場。何か非常に胡散臭い人物。どうやらスタンリーに何かをするために来たらしい。落ち込むスタンリーはスワンレイクさんの見舞い&お詫びに出かけれている。そんな時に突然の訪問者。エミリア・ネハムキン(松永玲子)。彼女は2階を貸しますと言う広告を見て訪問。大分前の広告だったので出した事すら忘れていたチャズ。気に入った様子のエミリア。ここでドーネンが余計な事を言って少々バタバタ騒ぎ。笑える場面。その後、スタンリーが戻って少し置いてスワンレイクさん登場。
ここまでで約1時間。多分。全体像は未だ見えず。
スワンレイクさんとは何とか仲直りをしたスタンリー。急速に仲良くなる二人。
そんな時、もう一人の訪問者登場。ジャック・リント(八嶋智人)。ガスの修理人。これで登場人物は全て登場。みんなが出払った後、家捜しをするジャック。何だか怪しい。
暗転。
部屋にいるのはドーネンとチャズ。部屋には2階の荷物が散乱している。ソファーに麻袋がある。それじゃやろうか。おもむろに麻袋を開けると中からスタンリーが出てきた。体から線が出ていてその先には端末が。「この記憶は消していいの?」「いいよ」ドーネンとチャズ。二人で話しながらスタンリーの記憶を「消去」していく。
スタンリーがロボットである事が明らかになる。
実はスタンリーが過去に好きになった女性達は謎の失踪を遂げている。その失踪事件を捜査しているのがジャック。
ストーリーはこんな感じ。
筋は他のケラ作品に比べても分かり易い。
でも、この作品でケラさんがやりたかった事は、分かり易い展開の奥に潜んでいそう。
先ず、役者陣。大倉孝二みのすけ犬山犬子松永玲子三宅弘城八嶋智人(敬称略)。
とにかく役者陣は充実している。
全員好きな役者さんだが、個人的に大倉孝二さんと松永玲子さんに注目。
上演時間約3時間弱。これを6人で演じるのだから出ている方は大変だろう。
しかも、この作品は個々の役者の特異な部分を一切出させなかったのだから余計にそうだったのではないだろうか?
そう言う意味ではナイロン100℃の役者が好きなファンは拍子抜けしたのではないだろうか。
私もその一人。でも、意外に奥が深いよこの作品。
説明台詞が殆ど無いのでしっかり見ていないと置いていかれる。先程も言ったが話が単純なだけに伏線を見のがしても全体像を捉えられる。それに甘えてぼんやりしていると置いていかれる。
では何をこの作品で表現したかったのか?
前作「男性の好きなスポーツ」と比較してみよう。「男性の好きなスポーツ」では、色々な性好を描いたケラさん。こんなに色々な趣味があるのね。そしてあんな部分に感じられる自分がいることを発見させられた作品でした。観客と一緒に変な人々を観察しながら、その変さ加減の中に自分の新たなる一面を見出す事が出来た。いやさせられた。
うって変わって「消失」では、何も無い事を発見させられる。重要だと思って一生懸命やっている事が、実は何にも無いんだよ。と言う事に気が付かされる。大量の情報を提供した「男性の好きなスポーツ」と、あると思っているものを削っていった「消失」。全く違うタイプの舞台をこの1年で上演したケラリーノ・サンドロヴィッチ。只者ではない。
単純な話だと思った時点で、大倉君は今回ははじけてないねと思った時点で、犬山犬子さんは今回は普通ぽいねと思った時点で、あなたは消失している。
今回の出演者にこのメンツを選んだ理由が良く分かった。中々この脚本を演じられる役者はいないです。
私自身どういう芝居だったのか昨日一日考えて、この程度の事しか書けません。
上手くまとめられなかったけど暫くして頭が整理されたらもう一度書き直そう。

↓一緒に観た人の感想です。私より上手くまとめられているので勝手に掲載しちゃいます。
ご免なさい。
「出てくるのは意図的に消されて失うものばかりでしたね。
家族、記憶、国家、命まで・・・
と同時に、再生しようとする意思や、消したつもりでも完全な消失はなかったり
(ラストシーンの影が印象的)という、消されっぱなしじゃないよ
という、たくましさみたいなことも感じました。
氷河期を越えて生き物が復活したのも含めて
なんか、そういうの繰り返されて根底にありますよねーと
大きなテーマにちょっと身震いする感じでした。」
&耳に残ったテーマソングも教えて貰ったので書いておきます。
タートルズの「Happy Togather」。

追記
出演していた方へ感想としてこのブログのURLを送りました。
返事が返ってきました。
嬉しかったです。
まだ先は長いですが、頑張って下さい。
もう一回観ようかな。